2012年8月20日月曜日

泥棒が盗んだ“ジョブズ愛用のiPad”を、何も知らないピエロが使っていたというお話。

 現在改装中の、故スティーブ・ジョブズの邸宅。今はジョブズの家族も不在だ。生まれて初めて“空き巣”を試みた男は、ジョブズの邸宅とは全く知らずに、そこへ盗みに入った。盗んだものは、ティファニーのジュエリーやアルマーニの腕時計などなど。その中には、3台のiPadも含まれていた。彼は盗んだiPadの中の1台を、高校時代の恩師に贈った。何も知らずにジョブズ愛用のiPadを受け取ったその人物は、泥棒をした男が高校生だった時、バスケットボール部のコーチだった。

 空き巣をした男の名は、カリエム・マクファーリン、35歳。金に困り空き巣を実行したという。盗まれたiPadを贈られたのは、ケネス・カーン、47歳。現在は、サンフランシスコの街頭などで曲芸をしている、プロフェッショナルの“ピエロ”らしい。カリエム容疑者とは、高校時代からずっと付き合いがあった。この、ピエロのカーンによれば、容疑者からは何の説明もなかったそうだ。「新しいiPadを買ったから、古いiPadをくれるのかな…」ぐらいにしか思わなかったという。このピエロは、とりあえず「ピンクパンサーのテーマ」をiPadにダウンロードして、曲芸の際にその音楽を流していた。数日後に、このピエロのところへ警察が来てiPadを没収。そこでピエロは、初めて、ジョブズ愛用のiPadだったと知るのだ。

 「まるでジョー・モンタナの家から盗まれたフットボールをもらうような話だ…」
故スティーブ・ジョブズ愛用のiPadで「ピンクパンサーのテーマ」を流し、曲芸という仕事に邁進した事を、ピエロは感慨深げに回想したという。マクファーリン容疑者は、2012年8月2日に逮捕された。ジョブズ邸で盗んだMacをインターネットにアクセスさせたら、セキュリティシステムが作動し居場所がバレたのだ。

 この話から2つの事が分かる。1つは、「iPadは、泥棒が盗みたくなるような魅力を持っている」という事だ。 もう1つは、「iPadは、その愛用者ならではの個性を感じられるデバイスである」という事だ。邸宅には、さぞかしアップル製品が多く存在したはずであろう。泥棒は、なぜジョブズの邸宅だと気付かなかったのだろう。ジョブズから盗んだMacでインターネットにアクセスしたら、どう考えてもすぐに足がつきそうなものだ。どうしてもMacやiPadを動かしたかったのだろうか…。我慢できなかったのだろうか…。iPadを贈られたピエロは、後からジョブズ愛用のiPadだと知って、感慨深げだったという。“ジョブズ愛用のiPad” という概念が、彼の中に特別な感情を呼び起こしたのだ。ジョブズ愛用のiPadには、どんなアプリが入っていたのだろうか。ジョブズはどんな音楽をiPadで聴いていたのだろう。ジョブズは、アイコンを、どんな風に並べていたのだろう。やっぱりSmart Coverを装着してタッチパネルを保護していたのだろうか。だとすれば、どんな色のSmart Coverを使っていたのだろう。私も、一度、スティーブ・ジョブズ愛用のiPadを見てみたいものだ。

 前回の投稿でも触れたが、iPadを操作するという行為には、独特の“手触り感”がある。アクセサリーにこだわって、自分だけのiPadを育てて行くのは楽しいものだ。自分好みのアプリをインストールして、自分好みの配置に整理して行く。これがiPadの楽しさである。iPadは、使えば使うほど、その愛用者の個性が反映されて行くのだ。スティーブ・ジョブズが愛用していたiPadには、彼ならではの個性や味が反映されていたに違いない。でも、ピエロが自分好みのアプリをインストールして自分好みのiPadに育て始めた瞬間に、それはジョブズのiPadではなくなってしまった。事前に知っていれば、ピエロは“ジョブズのiPad”をじっくり味わったことだろう。

 iPadは確かに工業製品であり、大量生産される、規格化された電子デバイスである。一見すると冷たい印象もあり、個性など存在しないガラスと金属の板きれのように思われるかもしれない。紙に印刷された本の方が、よっぽど温かみがあると思われるかもしれない。しかし、“ジョブズのiPad”だったのだと後から知って、感慨に浸ってしまう…。iPadとは、そういうものなのである。

2012年8月5日日曜日

文庫本の“手触り感”と、iPadの“手触り感”。

 紙の本を読むという行為には、独特の“手触り感”がある。指先に伝わる紙の感触。鼻に伝わる紙の臭い。ブックカバーに対する自分なりのこだわり。iPadを操作するという行為にも、独特の“手触り感”がある。アクセサリーにこだわって、自分だけのiPadを育てて行くのは楽しいものだ。

1. ブックカバーとSmart Cover

 私は、外出時に生まれる隙間の時間に、文庫本を読むのが好きだ。だから文庫本用の本革ブックカバーを持っている。ソフトレザーは使い込むほどに手に馴染みやすく、本の厚みに合わせてフィットさせやすい。扱い方も簡単で、値段もリーズナブルだ。本を汚れから守る事もできるし、“しおり”がカバーと一体化しているので、即座にそれを挟む事ができる。しおりを失くす事もない。私はiPadでもカバーを使用している。アップルの“Smart Cover”だ。これでiPadのタッチパネルを守る事ができる。Smart Coverには、ポリウレタン製と革製(イタリア製レザー)のものがある。私が使っているのは、グレー色のポリウレタン製カバーだ。マグネットの力で、即座に定位置に装着できるし、表面の手触り感もいい。覆うのは前面のタッチパネル側だけなのだが、その代わり本体背面の手触り感を楽しむ事ができる。iPadの背面には、陽極酸化処理というアルミニウムの表面処理が施されている。金属のマットな輝きは失われないが、サラリとした質感で指紋が付きにくい。金属のヒンヤリした温度が指先から伝わるのも心地良い。(負荷のかかる作業を長時間続けると、ほのかに温かくなる事もあるらしい。)Smart Coverは、10色から選べる。色によっては、汚れが気になる方もいらっしゃるかもしれない。私のカバーは薄いグレー色だが、今のところ特に汚れは気にならない。私は、ブックカバーにもiPad本体背面にも名前を刻印している。自分が好きな言葉を刻印するのも楽しいかもしれない。世界中でただ一つ、自分だけのオリジナルカバーやオリジナルiPadの誕生だ。

2. 紙の感触とタッチパネルの感触

 私は文庫本をめくる時の紙の感触が好きだ。もともとグラフィックデザイナーなので、紙にはこだわりもある。年月を経た本の紙は、黄色味が増して来るが、それもまた味。 読み進めていくうちに、しおりの位置が徐々に後ろへとズレていくプロセスが好きだ。どれくらい読み進めたのか視覚的に一目で分かる。実はiPadでも、タッチパネルに指先で触れる時の感覚が大切だ。私はiPadのタッチパネルに保護シートを貼っている。保護シートには、光沢(グレア)タイプと非光沢(アンチグレア)タイプがある。私が使っているのは光沢(グレア)タイプだ。光沢タイプは、液晶画面の鮮明さを損なわない。非光沢タイプは指紋が付きにくいのが特徴だが、画面の鮮明さを損なうように思える。私が使用しているのは、防指紋・光沢機能性フィルムである。光沢性を保ちながらも、指紋が付きにくいのが特徴だ。指先が少しひっかかる気もするが、それがまたいい。iPadの画面上でスクロール操作を指で行う時、タッチパネルを保護するシートの感触によって操作感が左右される。私はiPadでスタイラスペン(タッチペン)も使う。私のペンは保護シートに全くひっかからない。こういう微細な感触が重要だ。違和感のあるまま長時間使い続ける訳にはいかない。この保護シートは、完璧ではないが指紋も付きにくいと思う。こびりついた指紋を落とすには、アルカリイオン洗浄水でシート表面をクリーニングするのも良い。デジタル機器なのに、ちょっとアナログを感じる世界だ…。

3. 本棚の整理とアイコンの整理

 私は定期的に、本棚を分類・整理し直すのが好きだ。小説やノンフィクションといったジャンルで並べ直したり、カバーの色合いで並べ直したりする。カバーの色合いで並べ直すと、本棚が華やかになる。直近に読み直したい本だけを並べるコーナーを、ジャンルに関係なく片隅に設けたりする。本棚における本の並べ方によって、その人の個性を感じたりするし、どの本を手に取りやすくなるかまで影響すると感じている。本棚の整理は、自分の手を使って行う作業なので、これも本の“手触り感”の一部分である。iPadでもアプリのアイコンを整理する事は重要である。私は定期的に、アプリのアイコンを分類・整理し直すのが好きだ。その時の気分によって、色合いで並べ直したり、新しくフォルダを作ってジャンルに関係なく整理し直したりする。これも各ユーザーの個性が表出するところだと思う。iPadの場合、アイコンの整理や削除も指先で操作する。アプリの配置によって操作性も決まるし、何より自分らしいiPadを生み出す事ができる。アプリがなければ、iPadは、ただの持ち運べるディスプレイである。自分好みのアプリをインストールして、自分好みの配置に整理して行く。これがiPadの楽しさであり、これも指先で行うので、iPadの“手触り感”の一部分なのである。


 私は紙の文庫本を読むのが好きだ。これからも文庫本を手にし続けるだろう。一方でiPadを動かすのも楽しんでいる。それはiPadでしか味わえないアプリがあるからだ。「元素図鑑」や「お江戸タイムトラベル」は、iPadのようなタブレット端末でこそ最大限に味わえるエンターテインメントである。それらは、自分の指先を最大限に使って楽しむ新しいメディア上で動くものだ。iPadは、本体の素材や表面加工を徹底的に考えて設計されている。iPadに触れた時の、手の感触を非常に重視しているのだ。ユーザーインターフェイスも徹底的に計算されたデザインだ。指先で操作するための様々な工夫が施されている。私は紙に印刷された書籍を、単に電子化しただけの電子書籍を読むためにiPadを購入した訳ではない。iPadと電子書籍専用端末は、根本的に異なるものだ。電子書籍専用端末の“手触り感”は、今一つ見えてこない。電子書籍専用端末に関しては、これからも注視を続けて行こうと思う。