2012年9月5日水曜日

動物園のオランウータンが、「iPad」に熱中している… というお話。

 アメリカとカナダの動物園では、オランウータンがアップルの「iPad」を使って、アプリを楽しんでいるそうだ。『類人猿のためのアプリ』というプロジェクトの一環として、オランウータンの遊び時間にiPadを導入するという試みが行われている。iPadを導入しているのは、アメリカとカナダの12の動物園。このプログラムを運営するのは、「オランウータン・アウトリーチ」。ニューヨーク市を拠点とする非営利団体(NPO)だ。このプログラムは、中古のiPadを提供してもらったり、寄付金を募って運営されているようだ。

 オランウータンは週2回、iPadに触れる。そして、1回当たり15〜30分ほど様々なアプリを動かす。オランウータンが最も熱中するのは、人間の子供向けに作られた知育アプリだ。無料のお絵かきアプリやドラム・アプリで遊び、他のオランウータンの映像も熱心に見たりする。マイアミのジャングル・アイランド動物園のオランウータンは、コミュニケーション用のアプリを使って、人間と意思疎通する。例えば飼育員がiPadのアプリ上で何かの操作をすると、それに答えてオランウータンが反応し、それに対応するボタンを押す。その結果、人間とオランウータンとの会話が成立するのだ。オランウータンたちはiPadを使って、見慣れた物を識別し、自分の欲求や必要なものを表現するのである。以前に、手話をするゴリラが話題になった。今や霊長類のオランウータンが「iPad」を使う時代になったのだ。

 オランウータンにとっては、手話を覚えるよりもiPadの操作方法を覚える方が簡単なのかもしれない。オランウータンはDNAの97%が人間と共通であり、チンパンジーと並んでヒトに次ぐ高い知能を持っている。手話や道具を使ったり、鏡に映った姿が自分だと認識できる。このプログラムの目標は2つ。オランウータンに充実した活動を提供すること。そして、来園者に絶滅の危機にあるオランウータンの保護活動について興味を持ってもらうことだ。iPadを使うオランウータンを見るために、ジャングル・アイランド動物園には大勢の来園者が集まる。同動物園のトリシュ・カーンは、「絶滅の危機にひんしているからこそ、人々とオランウータンが接点を持つことがとても重要。オランウータンがこういった素晴らしい適応力と深い心を持っている驚異的な動物であることを人びとに知ってもらうことが私にとって最も重要なことだ」と語る。

 動物に電子機器を操作させることについては、賛否両論分かれるところだろう。しかし、この話からハッキリと分かることがある。「iPad」はオランウータンでも使えるほど、操作方法がシンプルであるということだ。Windowsパソコンをオランウータンに操作させるのは、ほとんど不可能だろう。iPadだから、こういう話になるのである。もうひとつ、この話から分かることがある。 iPadは、オランウータンの保護キャンペーンに使われるほど、ポピュラーで象徴的なデバイスであるということだ。多くの人々がiPadに興味を持ち、それまでのコンピューターとは少し違う道具であると知っている。だからこそ、オランウータンがiPadを使うという話に興味を持つし、なんらかの共感を呼ぶのだろう。誰もiPadに興味を持っていなかったら、このキャンペーンが成り立たない。

 スティーブ・ジョブズは生前、「一目見て、それが何をしてくれるのかを理解できるようにしろ」と言ったそうだ。 iPadに熱中するオランウータンの話を聞いたら、ジョブズはさぞかし喜ぶことだろう。将来は、オランウータンが「FaceTime」を使って、世界中の他のオランウータンとコミュニケーションをとるようになるのかも…。「Facebook」や「Google+」にまで、オランウータン用のユーザーインターフェイスが登場したりして…。